最近見かけなくなったものの一つに蓑虫があります。十数年前は公園などでもチャミノガが鈴なりになっていたものですが、何処へ行ってしまったのでしょう。今では見つけるのも至難の業です。天白区から蓑虫が消える日もそう遠くないような気がします。

蓑虫といえば、オオミノガやチャミノガなどの幼虫なのですが、年配の方であれば小さいころ蓑虫で遊んだ記憶があるのではないでしょうか。蓑というのは昔、農家の人達が雨や雪よけに使った雨具のことで、その形に似ていることから蓑虫といわれています。

もちろん、ミノガも夏の日差しや雨除けとして叉、冬の寒さを防ぐとともに、外敵から身を守る役目を果たしているのです。この蓑は非常に丈夫に出来ており、手で簡単に破けるものではありません。昔からバックや装飾品に使われてきました。
                                                   

                        オオミノガ
ミノガの種類によっていろいろですが、雄は翅もあり一般の蛾とそれほど変わらないのですが、オオミノガや下記のチャミノガの雌は幼虫から成虫になったといっても、我々の想像を絶する形です。翅も脚も口もなく、かすかに残す頭部と胸部以外はすべてが卵を宿す腹部で出来ており、芋虫そのものです。蓑を造って、一生蓑の中で過ごすのです。

数千個という多くの卵を残すためにすべてを捨てた結果なのでしょうか。産卵を済ませた雌は小さくしぼみ蓑から落ちて一生を終えるのです。 

オオミノガ 昔、雨具として使われていた蓑傘と蓑
蛹から外した状態ですが、これでも蛾の成虫なのです
蓑をぶら下げたまま移動する幼虫

近年、オオミノガの激減の原因として言われているのが、中国から来たと見られるオオミノガヤドリバエという寄生バエの影響です。私も詳しくは調べていないのですが、この寄生バエはオオミノガのみに寄生し、その手口がオオミノガの幼虫が餌の葉を食べている所に飛んできて、その鼻先で卵を産みつけるのです。当然、葉と一緒にその卵を食べてしまい、やがてお腹で食べた卵がかえり、ミノガの幼虫を食べつくして、このハエが何頭、何十頭と誕生するのです。

一般には寄生されることによって絶滅することはない(寄生宿が絶滅すれば自分達も絶滅を意味するからです)と思うのですが、突然に入り込んだこのヤドリバエにはこの常識が通用しないようで、多くの地域で絶滅もしくは壊滅状態になっているようです。


                              チャミノガ
蓑虫にもたくさんの種があるのですが、いちばんよく見かけるのがチャミノガです。オオミノガは紡錘形でぶら下がるのに対し、チャミノガは円柱形で枝に対して45度の角度で固定される形で付いています蓑は最初から大きいものを造るのではなく、成長に合わせて大きく張り合わせていくのです。特にチャミノガは成長に個体差があるために下の写真のように同時期にいろいろな大きさのものが見られます。大きくなるにつれ紡錘形となり、オオミノガと似て来るものがありますが、オオミノガは葉を主体に作るのに対し、チャミノガは多くの枝を張り合わせるので見分けが付きます。
晩秋からは葉が落ちるので目立ちます
蓑をかぶって餌を食べているところ
枝に対し約45度の角度になっています
チャミノガの雌